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■ 飯沼病院

板橋区常盤台2−33−15 TEL03-3960-0091 FAX03-3960-0019
 設立年:1946年
 精神病床数:373床(総病床数426床)
 開放病棟:4棟197床    閉鎖病棟:3棟176床
 専門病棟:老人精神病棟 1棟67床
 デイケア実施



*訪問に至る経過
 2006年7月東京地業研の留守電に飯沼病院事務方からメッセージあり。8月東京地業研飯田から電話し、留守電の内容についてお聞きすると「『東京精神病院事情』のホームページを見たが飯沼病院16点の評価に納得できない。どんな基準で点数をつけているのか説明に来てほしい」と。飯田は「本を読んでいただけば基準につての説明もあるので本を読んで頂きたい。本が手元にないのならお送りする。読んで頂いた上で、必要ならば病院に調査に伺うか、話し合いが必要であれば病院の外でお会いします」と伝え本を郵送した。12月終わりに「訪問調査に協力します」との連絡が事務長からあり、年を越えて訪問調査実施となった。

*訪問日    2007年2月21日(水)

*見学病棟   基本的に全ての病棟を見て下さいと言われたが
 閉鎖病棟(男性・女性)準開放病棟(男性)老人精神病棟(男女混合)
 開放病棟(男女混合)ぜひにとデイケアも見学

*立地条件   東武東上線ときわ台駅北口徒歩7分。
 駅前商店街を過ぎ、住宅街の中にある。

*建物と病院内の環境
 道路から4階建ての病棟がみえるが、古い鉄格子に囲まれた一見して精神病院と分かる建物である。玄関を入ると受付と外来待合室。待合室には     木目の机や椅子が置かれ診察を待つ人達の姿があった。
病院全体が古くて狭い。事務長の話によると改築を考えているとのことだが具体的なものとはなっていない様子であった。
  各階とも前は二つの病棟として使用していたものを一病棟として使用しているためナースステーション、デイルーム、トイレが二ヶ所に分かれてある。
  風呂場は、各病棟にはなく1階の病棟のみにある。
  デイルームの片隅に細長い洗面台があるが古く、汚い。デイルームは、二つ併せても入院者全員集まることはとても出来ない狭さである。花な      どが飾られ、少しでも居心地の良い環境にしたいという努力は感じられた。 トイレは、男性用は、中央部分のみ隠れるドア、女性用は、下の部分に       板を付けて下も隠れるようになっている。トイレの鍵は、閉鎖病棟では、外からも開けられるタイプ、開放病棟では、中からしか開けられないタイ      プであった。換気扇の効果があまりなくどの病棟もトイレの匂いが漂っていた。
  面会は、主にベッドサイドか廊下の片隅、デイルームでということであった。訪問中にも家族の方が面会に来ている姿があった。
  病室は、各病棟とも半分は、畳部屋で一室8~9名が定員。開放病棟には、一室14人定員のベッド部屋も一室あった。ベッド間のカーテンは無       く  鍵付きロッカーも無い。(見学しなかったうつ病の方達中心の病棟にはベッド間にカーテンが有ると言うことだった。)
 保護室は、全6室。男子閉鎖病棟でも年間に数えるほどの利用でほとんど使用していないという。ナースステイションからは離れた場所、二部屋       が扉を開けると並んであった。ベッド、ベッドなしの両方、トイレは囲いが全くなく、和式で穴が開いている感じ。ポータブルトイレが置いてある部       屋もあった。トイレの水は部屋の外から流す。ドアの下の方には小窓があった。  

*スタッフ   常勤医師数6名、常勤看護者数164名、常勤コメディカル数4名は、都内単科精神病院の平均から見ると看護者数は、平均よりもやや多いものの 医師、コメディカルは少ない。特にコメディカル数は少ない。医師は、担当医制をとっており、医師が病棟を回るスタイル。コメディカルは、全員       PSWであるが、一名がデイケア担当、三名が担当制で入院患者を受け持っている。看護は、二交代制、病棟内で作業療法士(作業療法士はいない)  の役割も担い熱心に入院者の方達と接している姿があった。

*入院者の状況
2005年6月末の統計から見ると回転率96%と都内単科精神病院の同時期の平均129%と比べると低い。2003年の63%から見ると退院する人も増えては来ている。統合失調症で入院している人190名53.2%は、やや少なめ。生活保護法での入院者218名61%は、都内第二番目の多さである。老人精神病棟の入退院が病院内では一番多いと言うことだが老人保健法の入院者の回転率は、106%。
現金については事務所に預けるのが原則。(管理費一日120円)自分で管理出来る人には週3000~6000円を渡すが数は多くはなさそうだった。各病棟に飲み物の自動販売機が設置されていたが一日2本限定、自販機利用のために看護者に現金をもらう人が多数いる。タバコは、院内全館禁煙を目指して2年程前から学習会等を開き、現在病棟により異なるが一日2~3 本に制限している。
院内に「カサブランカ」という入院者が切り盛りする喫茶店が毎週水曜日に開かれている。一日120人の利用者があるとのことで、ここでのコーヒーとケーキを楽しむことが入院者の唯一の楽しみのように見えた。
 デイルームが狭いためか、ベッドに座っている人が目についた。    
*退院への取り組み
アンケートへの回答では、長期入院とみなす期間を1年以上、社会的入院と考えられる入院者は、3割としている。開放病棟を退院支援病棟と位置づけている。この病棟では、個別に「退院に向けての指導マニアル」を作っている。不動産屋の協力もありアパート退院も勧めている。その他、退院のためのプログラムとして料理教室、SST、「カサブランカ」の手伝い、近隣の施設見学、近隣施設の職員の説明会をもったりしているとのこと。

*急性期医療
病院からのアピールにあるように「断らない医療」を目指しているが院長の話しの限りでは精神科的に急性期の患者は、少ない様子。閉鎖病棟の保護室もほとんど使用していない。向精神薬の点滴、電気けいれん療法も行っていない。リスパダール液の服薬とセレネース、セルシンの筋注を行う。
 
*この調査への病院側の対応 はじめに述べたような経過で訪問したが、訪問時は、事務長、PSW、看護師長が主に応対してくださった。院長は、デイケアの最中であったがデイケア見学をさせていただいた。訪問の最後には院長からのお話も伺えた。

<病院からのアピール> 
 内科、精神科の他にH13年より心療内科も開設。利用し易い、相談し易い外来を心がけている。また、心を病む患者さん及びそのご家族の入院依頼かつ来院された方は選ばず「断らない医療」を目指している。また、認知症の患者さんは地域医療連携でご紹介も多く病床回転率も高い。具体的には「認知症を考える会」(板橋区医師会)の委員として当院の専門医が関わっている。更に、精神保健福祉士、臨床心理士、大学の人間社会学部の実習生を積極的に受け入れ、将来の人材を育成すべく尽力している。


<「東京精神病院事情」への意見と希望>
医療は日進月歩で進んでおり、データは最新のものを用いてほしい。

<アンケート回答より>  
長期入院とみなす期間           1年以上
社会的入院と考えられる入院者の割合    1〜3割
 社会的入院について主要な原因と思われるもの
  退院したがらない ○
  家族が受け入れない ○
  社会資源がない ○
  行政の協力がない
  退院後の破綻が予測される
  院内のマンパワー不足
  その他

 退院支援室等、病院としての退院促進制度      ある
 特別な治療計画・看護計画     たてている
 患者が地域の生活を知るプログラム      ある
 当事者グループの受け入れ(AA)    受け入れている
 地域の支援団体の受け入れ    受け入れている
 地域生活を支援する社会資源の活用    活用している
 保健所・福祉事務所・障害福祉課への働きかけと連携 はい
その他 長期入院者の退院促進は
@ 地元不動産の協力もあり、受け入れアパート確保
A 福祉施設の見学、又は外部からの来院面接も年々増加
B DCセンター開設により短期入院も充実している

<訪問した私たちのコメント>
 「東京精神病院事情1998→2003」版は、2003年6月の精神病院統計をもとにして各病院の点数を出している。その結果が16点だった。病院側から最新のデータを用いてほしいと言われたので、私たちが入手できた最新のデータ(2005年6月現在)をもとに点数を出してみたところ19点であった。
都内単科精神病院の平均が24点であるから平均点以下の病院ということになる。16点が納得できないと言うことであったが今度は、他病院との比較も含めて納得していただけただろうか。
 病院の周りが再開発の中で新興の住宅街に変貌している。その中でこの病院だけが時代に取り残されてしまった感は否めない。外からも目立つ鉄格子、内側では、看護の工夫はあるもののそれだけではとても追いつかない病室の狭さ、プライバシーが守れない環境、古い洗面所やトイレ等々。      
外来待合室は、それなりの工夫があり居心地が良かったので病棟にもこれぐらいの工夫をしてほしい。
訪問の最後に院長より「ときわ台駅前にカフェレストランを開いた。開いた意図は、患者さん達が社会復帰していくのに作業所でままごとのような作業をしていたのではダメ。ちゃんとした仕事をしてもらうためと。でもやってみたら洒落すぎていたのか患者さん達が仕事をするのは無理だった。しかし、ぜひ寄っていって下さい。」と言われ帰りがけそのカフェレストランに入った。洒落た店だった。今見てきたばかりの病棟との落差にしばし唖然とした。ちゃんとした仕事をということはそのとおりと思うがその前に病院内でやるべきことが山積みと思った。例えば、入院中の方達が唯一の楽しみとしているらしい院内の喫茶店「カサブランカ」を考えてみても閉鎖の老人精神病棟の中にあり鍵を開け閉めして入る狭い空間にしか過ぎない。病棟から離れた鍵のかからない場所にもっと広い空間を確保できないものだろうか。

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